プレスリリース
日本の高齢心不全患者における入院関連能力低下(HAD)*の発生率とその特徴
―J-Proof HF研究からの知見―
日本循環器理学療法学会が主導するJ-Proof HF研究から、高齢心不全患者の入院を契機に生じる身体機能低下(入院関連能力低下:Hospitalization-Associated Disability; HAD)について新たな知見が得られました。
J-Proof HF Study(Japanese PT multi-center Registry of Older Frail patients with Heart failure)は本学会の高橋哲也理事(順天堂大学保健医療学部教授)が研究代表をつとめる高齢心不全患者の大規模全国多施設前向き登録研究です。
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国内最大規模の研究
J-Proof HF研究は、全国96施設が参加し、合計9,403人の高齢心不全患者(平均年齢83歳)を対象にした全国多施設前向き登録研究で、HAD研究としては、国内最大規模の研究になります。
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HADの発生率と特徴
登録された高齢心不全患者のうち37.1%がHADを有していました。
HADを有する患者は、非HAD患者と比較して高齢であり、高血圧、
慢性腎臓病、脳血管疾患の合併症が多いことが明らかになりました。
また、入院前の日常生活動作(ADL)に関するBarthel indexスコアが
有意に低く、基本チェックリストスコアが有意に高かったことが明らか
となりました。
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課題と展望
この研究から、心不全の高齢患者においてHADが約37.1%も存在し、これらの患者には回復期リハビリテーションの適応があることとから、日本国内で整備の遅れている高齢心不全患者に対する回復期リハビリテーションの普及が期待されます。
*入院関連能力低下(Hospitalization-Associated Disability, HAD):入院を契機に発生する患者の身体機能の低下を指します。身体機能の低下は、患者が入院生活を送る間に生じる機能的な制限や不自由さに直結します。
原著論文
本研究は、Circulation Journal誌のオンライン版に2024年1月13日付け公開されました。
Takahashi T, Iwata K, Morisawa T, Kato M, Kono Y, Taya M, Iida Y, Funami Y, Kamiya K, Sakurada K, Saitoh M. Incidence of Hospitalization-Associated Disability in Older Patients With Heart Failure. Circ J. 2024 Jan 13. doi: 10.1253/circj.CJ-23-0722.